
STORY | 私と、お客さまの、あの⽇の会話
あの想いを、
もう一度胸に刻んで。
私には一生忘れることのできない「ありがとう」の言葉があります。
それは入社2年目で営業に携わっていた時のこと。あるお客さまのご自宅の火災保険が更新時期を迎え、契約更新の連絡をすることになりました。その契約内容を改めて調べてみると、古いタイプの保険のため、もしもお客さまのご自宅が焼失してしまった場合、十分な補償が受けられないことがわかったのです。私は先輩達にも相談しながら、多少保険料が上がっても新しいタイプの保険を提案する準備を進めました。万が一の時に、お客さまの暮らしを守れないようでは保険の意味はありません。
「……ということで一度お伺いをしてご説明をしたいのですが」。私はアポイントメントをとってお客さまの自宅を訪問しました。
しかし、お客さまの反応はよいものではありませんでした。先輩達から教わったトークも交えて懸命に説明する私の話をひと通り聞いてはくれたものの、お客さまの答えは「前の保険と同じものでよい」とのこと。
けれども、私もこのまま引き下がるわけにはいきません。保険料を少しでも抑えられるように提案内容を見直し、改めて新しくすることの必要性をまとめ、1週間後、再び訪問しました。さすがに2度目となると、お客さまの雰囲気も和んだ様子。最終的には「そこまで熱心に勧めてくれるのならば…」と新しい火災保険を契約していただくことができました。
と、ここで話が終われば、日常の営業活動の1ページといえるかもしれません。けれども、私はこの契約を通じて保険が持つ重大な使命をまさに体感することとなります。
それから約3か月後、支店で事務作業をしていた私に、そのお客さまから突然電話がかかってきました。
「昨夜、火事で自宅が燃えてしまったんです……」
「えっ!」
私は絶句しました。「お怪我はないですか?」と安否を確認すると、すぐにお客さまの自宅に駆けつけました。
そこで目の当たりにしたのは凄惨な現場。
お客さまの自宅はすっかり焼け落ち、あたりは異臭が漂い、まだ消防士たちが居残って慌ただしく作業をしています。
現場に立ち合っていたお客さまとすぐに話ができました。幸い留守中だったこともあり家族にも怪我はなく、隣家からのもらい火が原因で過失もないとのこと。お客さまが気にかけているのはやはり保険のことのようでした。
「保険金はちゃんと支払われるんでしょうか?」
「この場で支払額は即答できませんが、1日でも早くご安心いただけるように全力で対応いたします。」
その後、お客さまと連絡を取り合い、保険金支払いに向けて手続きを進めました。会う度にお客さまの言葉の端々から保険金への心配が伝わってきました。そして約1か月後、保険会社の査定が完了し、全焼扱いとして十分な保険金の支払いが決定。私はお客さまを訪問してそのニュースを知らせました。
「ありがとう!ほんとうに助かりました」
お客さまは心から安堵した表情を浮かべると、その言葉を何度も何度も私に伝えてくれました。
笑みを浮かべるお客さまの顔を見て、私も無事保険金をお届けできたことに大きな喜びを感じました。と同時に、これまで経験したことのないような恐怖にも近い感情が起こったことをいまでも憶えています。その時、自分が与えられている使命の重さに気づきました。
もしも、あの時、私が途中で提案を諦めていたら…… あるいは説明が拙くて新しい保険の必要性が伝わっていなかったならば……。
その後、私はその支店から異動し、本社などでさまざまなキャリアを積んできました。どんな仕事でも迷った時には、「お客さまにとって本当に必要なものは何か?」を判断軸にして次の行動を決断してきました。そしてこの春、私はオフィス長というポジションで再び営業の第一線に戻ることに。あの時に抱いた大きな使命感を、いま改めて胸に刻み込んでいます。
総合職(全国)(35歳)

